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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)3799号 判決 1954年12月03日

主文

原判決中被告人の有罪部分を破棄する。

被告人を免訴する。

理由

弁護人片寄秀、同甘糟勇雄の各上告趣意は、末尾添付の別紙書面記載のとおりである。

職権をもって調査するに、原判決が自判により有罪と認定した本件公訴事実は、被告人は昭和一四年一月頃奈良県生駒郡斑鳩町大字法隆寺所在の法隆寺国宝保存工事事務所の技手に就任し、庶務主任として庶務一般の外特に壁面模写等に関する事務を担当しているものであるが、電気事業者である関西配電株式会社の承諾を得ずに、昭和二四年一月一七日頃電気工事請負人森村重一に、右法隆寺金堂東入口北側に設けてあった配電室の配電線から新たに配電線二本を分散させ、これを配電盤二基に連結した上金堂内に導き入れて丸型コンセントを取付け、更にテーブルタップ二基に連結して電気座布団のコード一六本を差し込み得るような電気工事をなさしめ、以って濫りに電気工作物の施設を変更したものである、というのであって、原判決はこれを公益事業令附則二一項、電気事業法三八条に該当するものとして、被告人を罰金五百円(二年間執行猶予)に処したのである。しかるに、右電気事業法は昭和二五年政令三四三号公益事業令(昭和二〇年勅令五四二号に基く命令)附則二項によって廃止され、同令は同年一二月一五日から施行されたが、同令附則二一項は「この政令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、第二項及び前項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」と規定していたところ、昭和二七年法律八一号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律によって、昭和二〇年勅令五四二号に基く命令(いわゆるポツダム命令)は、別に法律でその廃止または存続に関する措置がなされない場合においては、同法施行の日たる昭和二七年四月二八日から起算して一八〇日間に限り法律としての効力を有するものとせられたが、右一八〇日間の最終日たる同年一〇月二四日までに公益事業令に関する立法上の措置は何らなされることなくして経過したのである。従って同令は右一〇月二四日限り失効したものと解すべきであり、前示本件公訴事実については犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当るものというべきである(昭和二六年(れ)二三一六号、同年(れ)一五一五号、同二七年(あ)一六七六号、いずれも同二九年一一月一〇日大法廷判決参照)。

よって、弁護人等の上告趣意につき判断をなすまでもなく、刑訴四一一条五号により原判決中被告人の有罪部分を破棄し、同四一三条但書、四一四条、三三七条二号により被告人に対し免訴の言渡をなすべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

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